「傷害事件で逮捕されたら」何を知り、どう対処するべきか
傷害事件を起こして逮捕された場合、どのように対処するべきか。できる限り早期に最善の解決を目指すためには、どう対応するべきか正しい知識を持っておく必要があります。
この記事では逮捕の手続きから、対応策まで詳しく解説します。
目次
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傷害事件とは
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傷害事件とは
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傷害罪の構成要件
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逮捕とは
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逮捕とは
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逮捕された時の対応策
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すぐに行うべき行動
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弁護士への連絡
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まとめ
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傷害事件と対処方法の重要点
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防止策と心構え
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最後に
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法律知識の重要性
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傷害事件とは
まずは傷害事件について基本的な知識を確認しておきます。
傷害事件とは
傷害事件とは、人の身体を傷害した場合に成立する犯罪です(刑法204条)。
傷害とは、人の生理的機能に障害を当たることをいうとされており、暴行行為を行い被害者に怪我をさせることはもちろん、執拗ないやがらせ行為により被害者にPTSDなど精神的障害を与えるような場合も含まれます。
なお、被害者に対して暴行行為を行ったものの、被害者に具体的な傷害結果が生じなかった場合には、傷害事件にはなりませんが、暴行事件として刑事事件となる可能性があります(刑法208条)。
そもそも、日常生活での争いごとやトラブルをできる限り避け傷害事件を起こさないよう気を付けるのが一番ではありますが、万が一、傷害事件を起こし逮捕されてしまった場合には、逮捕後の手続きの流れを十分に理解しつつ、適切な対応を行うことが重要です。
傷害罪の構成要件
傷害罪の構成要件について詳しく説明します。
傷害罪においては、被害者の身体や健康に損傷を与える行為が必要です。被害者に肉体的な痛みやけが、あるいは精神的な苦痛が生じることが必要となります。
また、傷害罪においては、加害者が被害者に対し意図的に危害を加える意図があったことが必要です。つまり、加害者が被害者に対して故意に暴行や傷害を行った場合に傷害罪が成立します。
傷害行為を行うことについて、被害者が承諾している場合には、傷害罪が成立しない場合もあるといわれていますが、例えば、保険会社から保険金をだまし取る目的で、被害者の了解のもと、被害者に自動車をぶつけ怪我をさせたような場合には、被害者の同意があったとしても傷害罪が成立するした裁判例もあります。被害者が了解しているからといって、何をしても許されるということでは決してありませんので、十分に注意してください。
逮捕とは
次に、逮捕とは何か、逮捕の手続きや流れについて説明します。
逮捕とは
逮捕とは、被疑者(容疑者)の身体を物理的・強制的に拘束し、一定期間留置施設に留置することをいいます。
逮捕は、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために行われます。
逮捕には、3つの種類があり、通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕に分かれます。
通常逮捕は、一般的な逮捕方法であり、裁判官が発付する逮捕令状に基づき行われます。
警察等の捜査により、刑事事件が発生しており、その容疑者が浮上してきた場合に、司法警察官が裁判官に対して逮捕状の請求を行い、裁判官が逮捕状を発付すると、警察等が被疑者の下を訪れ、逮捕するという流れとなります。
しかし、今現在、犯罪行為が行われているような場合には、逮捕状の発付を待たず、逮捕できる場合があります。これが現行犯逮捕です。
また、一定の重大事件については、逮捕状なしに逮捕を先行し、事後的に逮捕状の発付を受けるという方法で逮捕することが可能な場合があります。これが緊急逮捕です。たとえば、警察官が、以前に重大犯罪を犯した疑いで指名手配されている犯人と思われる人物を発見した場合に、逮捕状の請求発付を待ってから逮捕するのでは、その間に逃走されたりする危険があるため、まずは逮捕手続を行った上で、逮捕後ただちに逮捕状の請求発付を受けることがあります。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕が不当な拘束や権力の乱用とならないように、逮捕状の発付を認めるかどうか審査を行った上で、適当な場合のみ逮捕状の発付を行うものとされています。
しかし、実際には、裁判官の令状審査には限界があります。
統計によれば、2023年に裁判官が発付した逮捕状の総数は84841件であるのに対し、裁判官が逮捕状の請求を却下したのは76件であり、逮捕状の請求の取下げ(撤回)がなされたのが1150件とされています(令和5年司法統計年報刑事編第15表「令状事件の結果区分及び令状の種類別-全裁判所」)
これによれば、逮捕状の請求がなされた場合の、裁判官の逮捕状の発付率は約98.6%であり、逮捕状の発付が認められなかったのは、わずか約1.4%ほどにすぎません(捜査機関による逮捕状の請求の取下げ(撤回)は、裁判官の促しによりなされた場合もあると思われるため、この件数を逮捕状の発付が認められなかった件数に含めて説明しています)。
このように、逮捕状の請求がなされた場合に、非常に高い確率で逮捕状の発付が認められているのは、裁判官の令状審査が捜査機関が作成した資料のみによって行われることに理由があるものと考えられます。
捜査機関としては、当該被疑者が犯罪を犯したことが十分に疑われること、そして逃亡または証拠隠滅のおそれがあることを、資料によって疎明するわけですが、捜査機関としては逮捕状の発付を求めているわけですので、捜査機関に有利な資料のみを資料として提出するのが通常です。
また、その資料には、客観性のある資料ばかりではなく、捜査官が、自己の認識・記憶・考えなどをまとめた捜査報告書という資料が多く含まれます。
そのため、裁判官の令状審査には限界があり、捜査機関から逮捕状の請求があった場合、そのほとんどについて逮捕状の発付が認められているのが実態と言えます。
万が一、逮捕されてしまった場合には、身柄拘束が長期化することを避けるため、その後の勾留がなされないようにすることが重要となります。
被疑者には、速やかに弁護士と接見(面会)し弁護人を選任できる法的権利がありますので、その後の不利益を避けるために、速やかに弁護人と接見することが望ましいです。
逮捕された時の対応策
逮捕されたらパニックになるかもしれませんが、その時にすべきことを知っておくことが肝心です。
すぐに行うべき行動
万が一、逮捕されてしまった場合、また、家族が傷害事件で逮捕された場合に、すぐに行うべき行動について詳しく説明します。
混乱やパニックに陥るかもしれませんが、冷静に対応することが重要です。以下に、すぐに行うべき行動を紹介します。
逮捕されたご本人においては、自分の権利を理解することが重要です。
逮捕された場合は、身体検査や取調べなどが行われることとなりますが、適切な法的手続きを受ける権利があります。自分の権利について理解しておくことで、不必要な取調べや違法な行為から身を守ることができます。
具体的には、被疑者には、黙秘権・弁護人選任権・接見交通権という権利が認められています。
黙秘権とは、取調べ等において、言いたくないことは言わなくていい、自己の意思に反して供述を強要されないという権利です。黙秘したことをもって、不利に扱われることはありません。
弁護人選任権とは、被疑者において、いつでも弁護人を選任できる権利のことをいいます。私選弁護人を選任できるだけの資力がない場合には、勾留決定がなされた後に限られますが希望すれば国選弁護人を選任できます。
接見交通権とは、逮捕・勾留されている被疑者が、弁護人と面会し相談ができる権利をいいます。
弁護人以外の一般の方においても、被疑者との面会は可能ですが、面会可能な時間帯(平日日中のみ)、1回の面会時間(10分から15分程度)、1日の面会可能人数(1日1組までとされることが多いです)、面会に当たり警察官の立会いがあり事件に話題は止められる場合があるなど、制限があります。一方で、弁護人であれば、面会可能な時間帯の制約はなく(夜間や土日の面会も可能)、1回の面会時間や1日の面会回数の制限もなく(基本的に何時間でも1日何回でも面会可能)、警察官の立会いや話題の制限もありません。
また、逮捕後は家族や親しい人に連絡をしましょう。身近な人に自分の状況を伝えることで、家族において私選弁護人を選任してもらうなどのサポートを受けることができます。家族や弁護士との連絡を取り、状況を共有しながら対応策を相談しましょう。
家族においては、逮捕された本人において、弁護人を選任できているかを確認し、弁護人がいない場合には、適任の弁護士を早期に探すことが重要となります。
その上でできるだけ早く弁護士に相談しましょう。逮捕された場合、身柄拘束されている状態ですので自分自身で対処するのは困難です。
法的な専門知識を持ち、適切なアドバイスや支援をしてくれる弁護士のサポートを受けることが重要です。早期に弁護士に相談することで、上記の被疑者の権利を理解し、取調べ等に適切に応対できるようになりますし、その後の勾留による身柄拘束の長期化を避けるためにも、速やかに弁護士に動いてもらう必要があります。
傷害事件で逮捕された場合は多くの情報や感情に囲まれることが予想されますが、冷静な判断と適切な行動が求められます。自分の権利や情報共有、弁護士への相談は、早期の解決に向けて重要な要素です。安心感と法的サポートを持ちながら、事件の解決に向けて前進しましょう。
弁護士への連絡
弁護士への連絡の仕方について説明します。逮捕された場合、すぐに弁護士に連絡することは非常に重要です。弁護士は法的な専門知識を持ち、被告人の権利を守りながら適切な法的アドバイスを提供してくれます。
まず、弁護士に連絡する際には、できるだけ早く行動する必要があります。逮捕後は、時間が重要な要素となるため、迅速な対応が求められます。被告人の権利を保護するためにも、逮捕直後や取調べが進む前に弁護士に連絡することが望ましいです。
相談依頼ができる弁護士に心当たりがある場合には、拘留場所の警察職員(留置係の警察官等)や取調官に、弁護士の情報を伝え、当該弁護士に連絡を取って接見に来てくれるよう申し出るのがよいです。
もし、弁護士に心当たりがない場合には、取調官や留置係の警察官等に対し、当番弁護士を呼んでほしい旨を申し出て、当番弁護士を呼ぶことをお勧めします。逮捕された被疑者は、希望すれば、当番弁護士を呼ぶことができます。
当番弁護士は、被疑者の希望があれば、被疑者が拘留されている場所に出向いて、無料で面会し相談に応じてくれます。ただし、当番弁護士の役割は、基本的に、1度面会して相談に応じることに限られますので、その後の刑事弁護を依頼するには別途正式に依頼をする必要があります。
なお、誰を当番弁護士として派遣してほしいかについて、希望を出すことはできませんし、弁護士との相性や信頼できるかなどもありますので、家族に依頼して、私選弁護を依頼できる適任の弁護人を探してもらうというのも1つの方法です。
弁護士は、逮捕手続きや法的な手続きに精通しています。自己防衛のためにも、弁護士の専門知識とサポートを頼ることは大切です。
ただし、弁護士の選択は迅速かつ慎重に行う必要があります。信頼できる弁護士に心当たりがない場合には、可能であれば、弁護士の専門領域や実績、口コミや評判などを調べ、候補の弁護士を探すだけでなく、可能であれば本人または家族において実際に面会して、信頼できそうか実際の印象を踏まえて選ぶのが望ましいです。自身の状況に適した適任の弁護士を選ぶことができれば、より効果的な法的な支援を受けることができるでしょう。
逮捕された場合、弁護士に連絡することは自身の権利を守り、公正な法的手続きを確保するために不可欠です。弁護士の専門知識とアドバイスを受けながら、事件の解決に向けて積極的に行動しましょう。
まとめ
記事の内容をまとめ、最後に取り扱った主要なポイントを再確認します。
傷害事件と対処方法の重要点
傷害事件と対処方法の重要なポイントについて説明します。逮捕された場合や傷害事件に関与した場合には、以下のことに留意する必要があります。
まず、冷静な判断力を保つことが重要です。傷害事件を起こさないように日常生活に十分に注意することが重要ですが、万が一、傷害事件を起こしてしま他場合でも、パニックに陥ることなくできる限り冷静に対処することが求められます。自己コントロールを保ち、感情的な行動は避けましょう。
次に、自身の権利を守るために、適切な法的な助言を受けることが重要です。できる限り早期に弁護士に相談し、自分の権利を理解しましょう。
さらに、情報共有とサポートを求めることも重要です。家族に状況を伝え、感情的な負担を軽減しましょう。また、弁護士から助言や支援を受け、解決への道筋を見つけることも必要です。
理由はどうあれ、被害者に傷害結果を生じさせてしまったことに間違いがない場合には、被害者に対する誠意ある謝罪と、適切な賠償を行うことが重要です。いわゆる示談と言うことになりますが、示談交渉については、自身で行うと感情的な対立やさらなるトラブルが生じる可能性があるため、自分で行うことはできる限り避けるべきであり、弁護人に依頼することが望ましいです。
また、自身のメンタルヘルスにも留意することが重要です。事件の影響で心理的な負担を感じる場合は、専門家のサポートを受けることで回復の道を見つけましょう。心のケアは長期的なプロセスであることを理解し、時間をかけて取り組むことが重要です。
最後に、事件を乗り越えるためにポジティブなマインドセットを持つことも大切です。事件について十分に反省し、適切な謝罪と賠償を行わなければならないことは当然ですが、過去の出来事を引きずるだけではなく、未来を前向きに見据えることも重要です。
傷害事件を起こしてしまった場合、冷静な判断力と法的な知識、サポート体制の活用が重要です。自身の権利とメンタルヘルスを守りながら、前向きな姿勢で解決に向けて取り組むことが重要です。
防止策と心構え
防止策と心構えについて考えてみましょう。傷害事件を防止するためには、以下の防止策と心構えが役立つでしょう。
まず、自己防衛のための基本的な知識や技術を身につけましょう。他者から攻撃を受けそうになった場合に備え、セルフディフェンスのトレーニングを受けたり、自己防衛用品を持つことで、危険な状況で自身を守る能力を高めることができます。
他者からの攻撃に対し反撃することで対抗するのではなく、可能な限り攻撃を受け流しさらなるトラブルにならないようにできるのが望ましいです。
次に、日常生活での争い事やトラブルを避ける努力をしましょう。人間関係のトラブルや衝突を避けるためには、コミュニケーションや妥協の力を持つことが重要です。他者への尊重や配慮を心掛け、紛争を最小限に抑えるよう努めましょう。
また、公共の場や人混みでは常に周囲の状況に注意を払いましょう。不審な人物や異変に素早く気づくことが重要です。自己防衛の意識を持ち、危険を察知した場合は早めに適切な行動を取ることが必要です。ながらスマホやイヤホンなどによるトラブルが非常に多く発生していますので注意が必要です。
さらに、自己の財布やバッグなどの貴重品の管理にも注意を払いましょう。盗難や置き引きを防ぐために、貴重品を常に目の届く範囲で管理しましょう。また、不要な情報や資料は削除したり、機密情報を保護する必要もあります。
最後に、常に自己防衛に関する情報や法的な規制の確認を行いましょう。法律や地域の状況によって自衛行為に制限や制約がある場合がありますので、状況に応じた適切な行動を心掛けましょう。
傷害事件を防止するためには、自己防衛の知識や技術の向上、日常生活での争い事の回避、周囲の状況に対する警戒心、貴重品の管理、法的な規制の把握が重要です。予防策を実践し、自身と周囲の安全を守るよう心掛けましょう。
最後に
最後に、読者へのメッセージを伝えて記事を閉じます。
法律知識の重要性
法律知識の重要性について考えてみましょう。傷害事件などの法的問題に直面した場合、適切な法的知識を持つことは非常に重要です。法律を理解することで、自身の権利を守るための行動や対応策を選ぶことができます。法律知識は我々を守り、思わぬトラブルから身を守る手段となります。また、法律が存在することで社会秩序が維持され、平和な共同体を築くことができます。法律知識の習得は、個人の安全や社会への貢献につながるため、重要なスキルと言えるでしょう。