国選弁護人とは?その仕組みと役割を解説
目次
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国選弁護人の基本知識
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国選弁護人の定義
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国選弁護人の仕組み
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国選弁護人の選任基準
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国選弁護人の役割
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被告人への支援
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裁判への貢献
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国選弁護人が関わるケース
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国選弁護人に選任されるまでの過程
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資格条件
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最後に
国選弁護人の基本知識
まずは、国選弁護人とはどういう人なのか、基本的な知識から押さえていきましょう。
国選弁護人の定義
国選弁護人とは、刑事事件で勾留された被疑者及び被告人が、経済的な理由等で自ら弁護人を選任できない場合に、本にの請求または法律の規定により、国が弁護士費用を負担して選任する弁護人のことを指します。
国選弁護人は、公正さと中立性を重視しながら、被疑者または被告人の権利を最大限に守ります。
刑事事件において、弁護人は、被疑者又は被告人の権利保護を図るだけでなく、刑事手続きの適正や公正な裁判を実現するためにも欠かせない存在です。
国選弁護人の仕組み
国選弁護人の機能や仕組みは、一見難解に見えます。ここではそれらを具体的に解説します。
国選弁護人の選任基準
国選弁護人の選任基準について見ていきましょう。国選弁護人を選任するためには、一定の条件を満たしている必要があります。
まず、被疑者または被告人が貧困その他の理由により弁護人を選任できないことが、条件の1つです。
ここでいう、「貧困」は、資力要件という言い方で説明がされ、具体的には現金及び預貯金の合計で50万円に満たない場合をいいます。
ただし、資力要件を満たしていない場合でも、弁護士会に対して弁護人選任の申し出を行い、弁護士から紹介された弁護士が私選弁護の依頼を拒否した場合には、国選弁護人の選任を求めることが可能です。
なお、法律上弁護人を付けなければならない必要的弁護事件であるにもかかわらず、弁護人が選任されていない場合には、資力要件に関係なく、国選弁護人が選任させることとなります。
次に、被疑者段階では、被疑者に勾留状が発せられていることも条件の1つです。
そのため、逮捕直後の場合で、まだ勾留されるかどうか決定がされていないときは、国選弁護人を選任することはできず、この段階で刑事弁護を依頼する場合には、私選弁護人に依頼する必要があります。
なお、以前は、被疑者段階で国選弁護人を選任できるのは、いわゆる重大事件の場合に限られていましたが、現在は、勾留状が発せられていれば全事件が対象となっています。
国選弁護人の役割
国選弁護人の役割は多岐にわたります。このセクションでは、そのさまざまな役割を明快に説明します。
被告人への支援
国選弁護人をはじめ、刑事弁護人の主な役割の一つは、被告人への支援です。被告人は自身の権利を最大限に守るために、適切な法的支援を受ける必要があります。
国選弁護人は、被告人に対して法的アドバイスや情報提供を行います。被告人には法律に関する知識や専門的な技術がないことが一般的ですが、国選弁護人はその代理人として、事件に関する法的な情報を提供し、被告人が冷静な判断をするための支援を行います。
また、国選弁護人は法廷での弁護活動を担当します。検察官の有罪立証に問題がないかを監視するだけでなく、裁判所での尋問や証拠の提出など、法廷でのプロセスにおいて被告人の権利を守るために積極的に活動します。適切な法的手続きを行い、証拠を適切に評価することで、被告人の利益を最大化し、公正な裁判を実現します。
また、被告人への感情的なサポートも重要な役割です。刑事事件は高いストレスを伴うことがあり、被告人は精神的に不安や困惑を感じることがあります。国選弁護人は、被告人の感情に寄り添い、相談に乗ったり、支えとなったりします。
さらに、国選弁護人は、被疑者・被告人に対して交渉や和解の機会を提供する場合もあります。事件の事実や証拠を総合的に考慮し、被告人の最善の利益を追及します。和解や交渉によって、被疑者段階では起訴を回避したり、起訴後の段階では被告人にとってより有利な判決結果を得ることができる場合があります。
被疑者または被告人の権利を最大限に保護し、手続きの適性や公正な裁判を実現するために、法的なサポートやアドバイスを提供し、また時として感情的な支援を行います。
裁判への貢献
国選弁護人は、裁判全体に貢献する重要な役割を果たします。その貢献について見ていきましょう。
まず、国選弁護人は、起訴後の被告人にとって、裁判の公正さと中立性を確保するために重要な存在です。彼らは被告人の代理人として、有罪を証明する検察官と対等な立場で証拠を吟味し、ときには必要な証拠を裁判所に提出いたします。被告人の権利を尊重し、公正な裁判が行われるよう努めます。
また、国選弁護人は裁判において法的な議論や主張を行います。彼らは被告人の立場を代弁し、被告人の無罪を争う事件においては、検察官の有罪の証明に合理的疑いが残ることを明らかにするために努力します。証拠の調査や専門的な知識を活かし、有力な弁護を展開することで、裁判の正確性と公正性を高めます。
さらに、国選弁護人は法的な専門性を持っているため、裁判において法的な問題や疑義に関する助言を提供します。裁判官や検察官との対話を通じて、法的な観点から事件を解釈し、裁判所の意思決定に寄与します。
国選弁護人はまた、裁判における公正な手続きを確保する役割も果たします。彼らは適切な証人尋問や法的手続きの実施を監視し、不当な取り扱いや不公正な行為がないように注意を払います。適正な手続きと公正な判決の実現を目指して、司法制度全体の信頼性を高めるのです。
国選弁護人は裁判全体において、被告人の権利保護と公正な裁判の実現に向けて重要な役割を果たしています。彼らの専門的な知識と弁護活動は、公正な判決の下での正確かつ適正な裁判を促進します。被告人の権利保護と司法制度の発展の両面において、国選弁護人の貢献は不可欠です。
国選弁護人が関わるケース
次に、具体的にどのようなケースで国選弁護人が関わるのかを見ていきます。
国選弁護人に選任されるまでの過程
被疑者又は被告人の側から見た国選弁護人について理解したところで、今度は弁護士が国選弁護人に就くための過程を見ていきます。
資格条件
国選弁護人に就くための資格条件について見ていきましょう。国選弁護人となるには、以下のような要件を満たす必要があります。
まず、弁護士としての免許を有していることが必要です。国選弁護人は法的な知識や技能を持つ専門家であり、そのためには弁護士としての正規の資格を有している必要があります。弁護士免許を取得するには、法科大学院を修了するなどして司法試験を受験し、司法試験に合格した後、司法修習を終了し、弁護士登録をする必要があります。
また、国選弁護人に就くために一定の研修や経験を求められる場合がありますが、この点は地域や弁護士会により異なります。
さらに、倫理的な規定や信頼性も重要な要素であり、国選弁護人は法律の倫理規定や職業倫理を遵守することが求められます。
最後に
国選弁護人であろうと私選弁護人であろうと、いずれも刑事弁護人ですので、選任されれば基本的に役割に違いはありません。
しかし、上記の通り、被疑者段階では、国選弁護人を選任できるのは勾留状が発せられた後のタイミングとなりますので、逮捕直後のサポートをしてもらうことはできません。
また、私選弁護人であれば、誰を弁護人に選任するか自由に選べますが、国選弁護人の場合には、あらかじめ国選弁護人の選任名簿に登載された弁護士の中からランダムに選任されますので、誰を弁護人にするかを選ぶことはできません。また、いったん国選弁護人が選任された場合には、その後被疑者被告人の意思で解任変更することはできず、新たに私選弁護人を選任する以外の方法では、原則として弁護人を変更することはできません。
国選弁護人を選任した場合には、私選弁護人を選任した場合と異なり、原則として弁護士費用の負担が生じませんが、上記のような違いがあるため、国選弁護人を選任するか、それとも、家族などの協力も得ながら私選弁護人を選任するか、慎重に判断する必要があります。